うみうし海底書庫

うみうし(内海郁)の作品倉庫です。

2022-01-01から1年間の記事一覧

【作品紹介】月夜のノクターン

《ストーリー》 文明が花開く19世紀末・ベルエポック。物質を操ることのできる『楽師』と呼ばれる存在があるこの世界に危機が訪れていた。 世界中を旅する楽師・レスリは、故郷であるフランスの異常性を耳にし、急ぎ帰還する。彼を待ち受けていたのは、最後…

【作品紹介】花と散る

《作品について》 『魔性の女』『狂っていく男』『相互不理解』『バッドエンド』 その笑顔は、僕を、俺を、私を、狂わせていく。 ある日現れた、一人の女性に人生を狂わされていく男の物語。『魔性』の正体とは、何故人間は魔性に惹かれてしまうのか。 現代…

【作品紹介】チャイナブルーの狂騒。

《ストーリー》 『感情の一方通行』『殺し合い』『抗争』 20世紀初頭。とある邸宅にて一人の魔術師が殺された。犯人は彼にまつわる三人の男女。黒髪の男・睿玄、赤い返り血の食人鬼・紅雨、白い妙薬の女主人・皓珠。 利害の一致で一時的な同盟を組んだ彼らだ…

【作品紹介】Beast Of The Opera

《ストーリー》 『許されざる恋』『魔性』『百合』『獣の呪い』 オペラ座の地下には至宝が眠り、それを暴こうとすれば、怪人に命を狙われる……そんな都市伝説が囁かれるパリの街。 装幀師を目指す青年・セザールはひょんなことから友人と共に噂を確かめるため…

beast of the Opera  三〈再会〉

三〈再会〉 記念公演当日。オペラ座周辺は、着飾った観衆達でごった返していた。ベルサイユを彷彿とさせる賑やかさとは裏腹に、地下は身が凍るほどの静寂を漂わせていた。ただ、一つの部屋を除いては。「エステル。ああ、エステル。素晴らしい。私の見立ては…

beast of the Opera 二〈怪人〉

二〈怪人〉 翌日、セザールが学院内図書室に訪れると、席にロジェがいた。じっと本にかじりつき、頭を抱えている。読んでいるのは初歩的な製本作業に関する教本だった。なかなか動かないペン先を見るに、問題に躓いているのだろう。「どうしたのロジェ」 小…

beast of the Opera 一〈守人〉

一〈守人〉 オペラ座の地下には、至宝が眠る。 この噂を聞きつけた荒くれ者は、至宝を我が物にしようとオペラ座の地下に自ら舞い降りる。だが一度降りたが最後、彼らが地上に戻ってくることはなかった。しかも、その事実を知っていながらも、自分は生き残れ…

beast of the Opera  序〈装幀師ラファイエット〉

序〈装幀師ラファイエット〉 パリの石畳の上を一人の女が進む。すらりと長い手足に黒ずくめのスーツがよく似合う、少し目尻の跳ねた強い顔つきの女性だ。 短く切り揃えられた巻き毛の黒髪は、纏う香水と共に風に揺られ、陶器の人形じみた無表情は、すれ違う…

花と散るー無垢の辜

《一》 今から十数年前、戸津ケイヤはこの小さなベッドタウンにやってきた。経年劣化で濁った、外壁と蔦が印象的な古びたビル。その一室が、彼にとっての初めての城だった。 上京して間もないあの頃。新宿のゴミ捨て場で、昼間から酒を飲んでい、暇そうな中…

チャイナブルーの狂騒0-1

穏やかな夏風が頬を撫でる、穏やかな夜。 朱色の調度品で整えられた薄暗い客室で、白髪交じりの男が仰向けに倒れている。緻密に編み込まれた金糸入りのカーペットには、一目で致死量とわかる量の血液が広がっていた。 周囲に漂うは、むせかえる煙草と僅かな…